人生の曲がり角に立った映画監督の迷いと苦しみ
――「ひとりの男、9人の女。」というキャッチコピーが印象的ですが、どんな物語なのですか。
僕が演じるグイド・コンティーニという男は、かつて多くのヒット作を生んだ映画監督ですが、現在は新作の構想に行き詰まり脚本が書けないというスランプに陥っています。そこに、破綻しかけた結婚生活を憂える妻や、ダブル不倫中の愛人、グイドの新作に投資するプロデューサーなど9人の女性が登場し、さまざまな物語が展開していきます。
ストーリーだけを追うと、「伊達男の恋愛事情」と思われそうですが、実際に描かれているのは「人間とは何か」という大きなテーマ。それを、難しい哲学や理論ではなく、グイドと女性との関係性で表現しているんです。人は誰しも「人間とはこうあるべきだ」ということを口で説明することはできなくても、これまでの人生経験のなかで、自分なりの答えを持っていると思うんです。だからこそ「ナイン」のテーマは誰にとっても身近なものだし、自分自身や自分を取り巻く人間関係を見つめなおすきっかけにもなる作品だと思います。
グイドを通じ見えてくる9つの人生観と恋愛観
――作品の見どころ、楽しみ方を教えてください。
物語は、現実の世界とグイドの妄想、それからグイドにトラウマを与えた子ども時代の出来事など、さまざまな世界が立体的に描かれています。「これは現実? それともグイドの空想世界?」と楽しみながら見てほしいですね。共演するみなさんは、役者としてのスタイルが確立されている人ばかり。この舞台にはアンサンブル(脇役)がいないので、誰か一人にスポットが当たる時は、その他のキャストが陰となります。その演出にも注目してほしいですね。
物語の主役はグイドですが実はそこから見えてくるのは、グイドを通じて浮き彫りになる9人の女性の人生観や恋愛感。女性は、自分の視点を9人の誰かに投影することで、いろいろな角度から観劇できると思います。男性なら、仕事と私生活に境界線を引くことができず、どこか子どもっぽさが残るグイドに共感できる部分があるのではないでしょうか。
――「ナイン」を通じて、観客に伝えたいことは?
人はいろいろな過ちを犯しながら生きていますが、それを受け止めた時に初めて新しい一歩を踏み出すことができると思います。黙っていても月日は過ぎていくので、一見進んでいるかのように感じるかもしれない。けれど人に与えてしまった苦しみを自分で実感できなければ、前には進んだことにならないと僕は思うんです。この作品は、人生の岐路に立たされたグイドが、周りの女性を巻き込みながらも苦しみを受け入れ、再び希望を見い出すまでを描いています。観劇後、「一歩踏み出してみよう」と前向きな気持ちで進んでいけるような作品にしていきたいと思っています。

















